ワインはどうやって造られる?
同じブドウでも、皮と一緒に発酵させるか、樽で熟成させるかで、一杯の表情は変わります。工程の名前を覚えるより、何のために行うのかをたどってみましょう。

更新:2026年10月5日
すべての出発点は、ブドウと発酵
ワインの中心となる変化は、酵母がブドウの糖を利用し、アルコールと二酸化炭素を生み出すアルコール発酵です。ブドウジュースが、香りと味わいを持つワインへ変わる過程でもあります。「ブドウを絞って置いておく」という説明だけでは、造り手の判断や、発酵中の管理は見えてきません。
基本の流れは、収穫、選果、果汁や果皮の準備、発酵、貯蔵や熟成、必要に応じたブレンドや清澄・ろ過、瓶詰めです。ただし、赤と白では圧搾の位置が違います。例外的な造り方もあるので、一つの順番をすべてのワインに当てはめないでください。
糖があるブドウから造るのに、ワインが必ず甘くならないのは、発酵で糖が消費されるためです。甘口には発酵の止め方や原料の状態など、さまざまな方法があります。熟した果実の香りがすることだけで、甘口かどうかは判断できません。
収穫は、早いか遅いかだけの問題ではない
収穫時期を決めるとき、造り手は糖や酸、香り、果皮や種の状態、天候、目指すスタイルを考えます。遅く収穫した方が必ず高品質、ということではありません。爽やかな酸を残したいのか、熟した果実の印象を出したいのかでも判断が変わります。
収穫後は、傷んだ果実などを取り除く選果を行う場合があります。房の茎を取り除く除梗、果皮を破る破砕、果汁を絞る圧搾は、それぞれ違う工程です。房をそのまま使う方法もあり、機械で一律に処理するとは限りません。造り方の紹介に「全房発酵」と書いてあれば、除梗して粒だけを使うのではなく、茎を含む房を発酵容器に入れる方法を指します。全量ではなく一部の房だけを使う場合もあり、使用割合や房の置き方によっても香味への影響は変わります。「全房」という言葉だけで、同じ香りや渋みになるとは決められません。
赤ワインは、皮から色とタンニンを得る
一般的な赤ワインでは、黒い皮のブドウを使い、果皮と果汁を接触させながら発酵させます。この接触から、色やタンニンなどがワインへ移ります。多くのブドウは果肉の色が淡いため、赤ワインの色を考えるときは、果汁だけでなく果皮との関係が重要です。
発酵中には果皮が浮き上がるため、果汁と接触させる作業が行われます。どの程度の成分を引き出すかは、接触時間、温度、混ぜ方、ブドウの状態などで変わります。長く接触させれば無条件に上質になる、というわけではありません。繊細さを残す判断も、力強さを出す判断もあります。
その後、液体を分け、果皮などを圧搾します。同じ品種でも、抽出の方針によって、口当たりや渋みの感じ方は違います。ラベルの品種名だけで「これは渋いはず」と決められない理由の一つです。

白・ロゼ・オレンジは、皮との関係で理解する
一般的な白ワインでは、発酵前に圧搾し、果汁を主体として発酵させます。白ブドウが多く使われますが、黒ブドウでも果皮から色をあまり引き出さずに白ワインを造ることができます。ブドウの皮の色と、完成したワインの色は、一対一の関係ではありません。
ロゼには複数の製法があります。黒ブドウの果皮と短い時間接触させて色を得る方法や、直接圧搾する方法などです。「赤と白を混ぜたもの」という説明だけでは、多くのロゼを理解できません。一方、ロゼ・シャンパーニュには、泡のない白のベースワインに同じ産地の赤ワインを加え、その後に二次発酵を行うブレンド製法もあります。「ロゼは必ず混ぜる」「混ぜる方法はない」のどちらも、すべての製法には当てはまりません。色が薄いから必ず甘い、色が濃いから必ず重い、という判断も避けましょう。
オレンジワインは、一般に白ブドウを果皮と接触させて造るスタイルです。オレンジという果物が原料という意味ではありません。皮との接触によって、色や香味、タンニンの印象が変わります。ただし接触時間や造り方の幅が大きいため、一律に強く渋いスタイルだとは言えません。
発酵のあとも、香りと質感は変わる
発酵が終わった後、タンクや樽などでワインを落ち着かせ、熟成させることがあります。新しいオーク樽は木に由来する香りを与える場合がありますが、古い樽や大きな容器では同じ強さになるとは限りません。「樽熟成」という言葉だけで、必ずバニラが強いと決めないでください。
マロラクティック発酵(MLF)は、乳酸菌の働きによってリンゴ酸が乳酸と二酸化炭素へ変わる過程です。酵母が糖からアルコールをつくるアルコール発酵とは異なり、酸の感じ方や香味に関わります。アルコール発酵後に進める方法だけでなく、発酵中に乳酸菌を加える方法もあり、必ず二つの発酵が順番に起こるわけではありません。すべての白ワインで行われるわけではなく、部分的に行う選択もあります。また、発酵後の澱と接触させる工程は、質感や複雑さを考える手がかりになります。
ステンレスタンクが安いワイン、樽が高級ワインという単純な序列はありません。容器や工程は、目指す香味をつくる選択です。爽やかさを前面に出すスタイルと、樽の香りや厚みを組み合わせるスタイルのどちらが好みか、という目で読むと役立ちます。
ブレンドと瓶詰めを経て、私たちの一杯へ
複数の品種、区画、容器のワインを組み合わせるブレンドは、欠点をごまかすためだけの工程ではありません。それぞれの特徴を使い、目指すバランスやスタイルをつくる判断です。単一品種だから純粋で上、ブレンドだから下、という見方は避けましょう。
瓶詰め前には、必要に応じて清澄やろ過などが行われます。その有無だけで品質を判定することはできません。「無ろ過」と書かれていたら、どう造られ、どう保管する想定かを生産者の説明と合わせて確認します。
工程を知ると、商品説明の「樽」「澱」「全房」が、自分の感想とつながります。次に一本を飲むときは、造り方を全部調べる必要はありません。気になった香りや質感に関わりそうな工程を、一つだけ確認してみましょう。
スパークリングワインの泡は、どう生まれる?
スパークリングの代表的な製法では、発酵で生まれる二酸化炭素を閉じ込め、ワインに溶け込ませます。ただし、すべてが瓶の中で二回発酵するわけではありません。
瓶の中で二次発酵する、伝統方式
シャンパーニュなどでは、まず泡のないベースワインを造り、糖と酵母を加えて瓶を密閉し、二次発酵させます。その後は酵母由来の澱とともに熟成し、澱を瓶の口に集めて取り除きます。澱との熟成はパンやトーストを思わせる香りにつながることがありますが、すべての瓶内二次発酵のワインが同じ味になるわけではありません。
密閉タンクを使う方式
プロセッコで広く使われるタンク方式では、瓶ではなく密閉したタンクで二次発酵を行います。果実や花の香りを生かすスタイルが多く見られます。タンクを使う製法でも、アスティのように一回の発酵で泡を得るものがあり、「タンク方式=必ず二次発酵」とは限りません。
最初の発酵を瓶で続ける、アンセストラル方式
最初の発酵が終わる前に瓶詰めし、瓶の中で発酵を続けて泡を得る方法です。ペットナットと呼ばれるワインに使われます。澱が残るものもあるため、濁りだけで品質を判断せず、生産者の説明を確認します。
泡のあるワインを選ぶときは、果実の香りを楽しみたいか、澱との熟成による香りも楽しみたいかを考えると、製法の説明が好みを探す手がかりになります。
商品説明を、味の予告として読んでみる
「ステンレスタンクで発酵」「樽で熟成」「澱とともに貯蔵」という説明を見たら、工程の名前を暗記するだけでなく、どんな香味を目指しているのかを考えます。ただし、その工程があるから必ずこの味になる、とは言い切れません。原料と他の工程も同時に関わるためです。
樽の説明があれば、新樽なのか古い樽なのか、樽の大きさや使用期間がわかるかを確認できます。すべての商品に詳しい情報があるわけではないので、書いていない部分を推測で埋めないでください。わからない場合は「樽使用は確認できるが、詳細は不明」とする方が正確です。
飲んだ後には「説明で期待した香りが感じられたか」「想像より軽かったか」を振り返れます。説明通りに感じなかったとしても、すぐに自分の感覚が間違いだと考える必要はありません。温度や開栓後の変化なども含めて、一杯の体験を積み重ねていきましょう。
参考資料
専門機関の解説を参考に編集しています。一般的な傾向と、好みを探すための編集上の提案は区別してお読みください。
読者のコメント
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